田んぼ図鑑へ

Top

〜森の時間〜

2003年撮影ノートから!

 久しぶりに、青森県下北半島脇野沢村の、厳冬の森に入った。 この森に住む’ニホンザルの群れ’を観察・撮影する為だ。 撮影を始めてから、今年で12年。 いつ来ても変わらない、この森に流れる時間と、気配が好きだ。

 朝、冬の光が’森’に差し込み、新雪の斜面にキラキラと反射しながら流れてゆく。

 森にゆるやかな、冷たい風が吹く。 あたりは静まりかえっている。 どうやら、夜半から降り続いた雪が、生きもの達の気配を消してしまったようだ。 森の住人達は皆息を潜め、私達の息遣いだけが響いていた。
それでも、動物達を探してふわふわに積もった雪の感触を楽しみつつ、森の奥へと歩いていった。 

      
          
新雪が積もった森は楽しい。 姿は見る事が出来なくても、生きもの達の痕跡はすぐに見つかる。

「生きもの達の森」

カモシカ

ニホンザル

 しばらくすると、かすかに鳴き声がする。 それまで、風の音しか聞こえなかった森に、 フゥーイ、フゥーイとサル達の鳴き合う声がながれて来た。 ふと見上げると、私達の頭の上で、朝の食事の真っ最中だった。 冬の日差しがポカポカと、彼らをつつんでいた。
 
 私達の住む、すぐ近くの森で、何千年、何万年となく繰り返し、繰り返し生きてきた動物達の営みが、この森にはあった・・・。

つづく
03.02.05
さくま ふみお